火炉~KARO~第一幕



火炉の顔が見えない。溢れ出る涙で歪んだ視界は、火炉がどんな表情をしていたとしても、私に伝わることがない。


だけど火炉は、唇で私の涙を舐めとった。ああ、聞いたことはある。涙は血でできているって。


胸が痛んだ。こんな時でも火炉は、食欲なのだろうか、と。


だけど涙を食べられたことで目の前が開かれた時、火炉の顔を見て、とても驚いた。


「か、ろ。」

「……ああ。」



火炉が、泣いていた。苦しそうに、なのに嬉しそうに。


「火炉。」

「ああ。」


私は名前を呼んで、火炉は返事をするだけ。


「愛しています。」

「俺もだ。」


私が感情をぶつければ、火炉も嬉しそうに受け止めてくれる。



ここに来て初めて、火炉の感情が見えた気がした。


「お前の涙は、美味いな。」

「ふふ、そうですか。」



いつもの、食欲に忠実な火炉なのに、彼の目尻から流れ続ける涙が、私に伝え続ける。



鬼と人間だって生き物で、私と火炉は、どんな方法だろうと出逢ってしまった。


鬼と人間が、どんな恋愛ができるのか分からないけれど、私のために涙を流すこの鬼を、私は全身全霊で愛そうと誓った。



「火炉。」

「ん?」


指先で火炉の涙を拭って、舐めてみた。美味しいどころか、しょっぱいだけ。



0
  • しおりをはさむ
  • 4955
  • 10871
/ 492ページ
このページを編集する