火炉~KARO~第一幕




「なんだ。お前が俺を食らったところで美味くはないだろう?」



火炉がクスクスと笑う。その笑みはとても穏やかで、胸が苦しくなった。



「私、頑張ります。」

「何をだ?」


きっと、私は火炉の腕の中にいればなにもしなくてもいい。現に火炉がそう思っているからこそ、そう質問されているのだから。


「色々、です。」


更に訳が分からないのか、火炉が首を傾げる。残酷で美しく、そして最高に愛おしい私の鬼。胸に飛び込んで額を摺り寄せた。


「あんまりくっつくと、食らうぞ?」


笑い交じりのその声を聞きながら目を閉じた。浮かぶのは、火炉の顔と月夜の笑顔。


私がここで生きていくには、火炉の贄として生きていくには、私はここで頑張らなければならない。


「眠いのか。」


頷いた。そうすればきっと、この大きな不安は読み取られることはないだろう、そう思って。


「……まったく、嬉しがったり不安になったり、うるさい奴だな。」

「バレてる。」


でも結局、鬼にそれは隠しきれない。火炉を見上げれば、私の目をまっすぐに見る火炉が溜息を吐きだした。


「漠然とした感情は匂いで分かる。お前は少し抑えられないのか。目の前に色々な食材をひっきりなしに差し出されている気分だ。」


やれやれとばかりに首を横に振る火炉。これって、私が悪いのだろうか?


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