火炉~KARO~第一幕

鬼と人間の心 /地影

side 和子




「決めたよ。私はあなたに付く。」

「え?」



地影という鬼がそう言った途端、室内に動揺が広がった。


付く、というのは、どういうことを意味するのか、想像もつかない私はただ、火炉にこの状況を説明してくれるよう、視線で助けを求めるしかできない。


なのに火炉は不機嫌そうに頬杖をついてまっすぐに地影を見ている。


「理由は?」


その声に、全身の毛が逆立つような恐怖を感じた。私には決して向けられたことのない殺意。きっと地影の返答次第では、火炉はこの鬼を殺してしまうに違いない。


だけど、この童子のような鬼は、そんな火炉に笑顔を向けている。

なぜだろう。この鬼の方が火炉の何倍も怖いと思った。気持ちをまっすぐに出す火炉とは違って、この鬼は得体がしれない。なんとなくこの鬼を見ていると、居心地が悪かった。


地影の存在に混乱して後退る私の後ろ手を火炉が掴んで引く。再び戻った火炉の膝の上に座り、なんとか平静を保とうと火炉の指先を掴んだ。


火炉が、チラリと私を見る。小さく頷けば、何事もなかったかのように視線を戻した。


「そうさなぁ、理由か。」



そんな私の意識を取り戻すように、地影の緩やかな声が室内に響く。不思議と、地影の言葉に耳を傾けている自分がいる。





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