火炉~KARO~第一幕



「じゃあなにか。その村は人攫いをしていると?」

「……恐らく。」



鬼が人間を食らうのは本能から。鬼からいえば人間は食肉に過ぎず、ただの家畜として見るのは当たり前のこと。


食べられる側は弱者として、自然の成り立ちでそれは消えゆく存在。だけど人間は、逞しく生きてきた。大昔に比べれば数は減っているというけれど、人間という存在が希少な生物にはなってはいない。


それだけ人間はたくましく、生命力に溢れている。


「馬鹿馬鹿しい話だな。」


火炉が溜息を吐いた。その顔には呆れ。私でもすぐに分かるその感情。


人の生きる力を尊敬する反面、時に人は、とんでもなく愚かだと思うことがある。


生きるため、鬼に立ち向かうことをせず家畜としての人生を選んでいる。

生贄という形で自分の大切な家族を献上して、自分たちが生きながらえている。

自分と少しでも違うのなら、それは同じ人間ではない。人の中には少なからず、そんな考えの者がいる。


そして人は時に、鬼よりも残酷なことをする。


「そんな、」


この先の言葉は、何も浮かんではこない。私のような境遇の人がたくさんいるのかと思うと、いたたまれなかった。


全ての人が私みたいに食べられることを覚悟できるわけじゃない。全ての人が私みたいに、最高の出会いをするわけじゃない。


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