火炉~KARO~第一幕

異なる心 /琴

side 和子



「どうした?」



雷地が消えていった方をぼう、と見ていた私を火炉がその逞しい腕に引き寄せた。


私の口から漏れでた吐息は、ある場所から突然白く変わり、ゆっくりと空気に溶け込んでいく。部屋が寒いのだろう。そこでようやく気づいた。


「私は、火炉を弱くしていますか?」

「なんだと?」


愚問だと分かっていても、聞いておきたかった。私というちっぽけな存在が火炉に影響するとは思えないけれど、先ほど、雷知は確かにそのようなことを言っていた。


強さこそ、鬼が鬼である証。それなのに私の存在が、火炉の地位を脅かしている。そんなこと、あってはならない、のに。


「お前はどう思う?」


そう言われて火炉を見れば、楽しそうに笑う鬼がこちらを見ていた。


この屋敷に来たときとなんら代わりのない、強さを宿した真っ赤な目は、真っ直ぐに私を見ている。はじめの頃に比べれば穏やかに笑うようになった。


だけど、なぜだろう。あの時よりも、火炉が恐ろしいのは。



「そうは、感じません。」

「そうか。」



私の返答が分かっていたかのように、火炉が頷いてみせた。


何も考えることなく、思ったの。



この鬼は、とても恐ろしい、と。



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