火炉~KARO~第一幕

異なる心 /危機

side 和子



私が捨てるべきものとは?


「生意気な奴!」

「ほんと!あの食料にひれ伏して。自尊心はないのかしら!」

「なにか言いなさいよ!」


それはきっとやさしさ、なんだと思う。


「何も言いやしない。」

「笑いも苦しみもしない。気味の悪い子ね!」

「匂いもしないわ。心を閉ざしてる。」


いえきっと、それは"使うべき場所"で使うべきで、私はそれ以外に優しさなんて見せてはいけない。



怒声と何かを殴る音が聞こえる部屋の前、扉を前に立ちすくんでいた。


「どうするのだ?」


真後ろには、鬼。綺麗な赤い目を細めて、私を試す。

お前はできるのか、と。



私の中で渦巻くのは、不安と恐怖、そして、強い軽蔑。それは憎悪とも呼べる。



「なんの匂い?」

「ほんとだ。匂うわ。」

「少なくとも月夜じゃないわね。こんなに美味しそうなわけないもの。」


下卑た笑い声に交じる、鬼たちの食欲。それは私には匂いでは分からないけど、声音の昂りで分かる。



「どこかの贄が逃げ出してるんじゃないの?」

「そうかもしれないわ。探しにいく?」

「そりゃそうよ。見つけておこぼれを貰わなくちゃ。」



鬼にも、地位がある。それは強さに比例して成り立ち、同時に飼える家畜の人数も決まる。


侍女程度では、1人すら無理。ただ逃げだした贄を捕まえて、その飼い主が食べる時におこぼれを貰える程度だった。





0
  • しおりをはさむ
  • 4955
  • 10813
/ 492ページ
このページを編集する