火炉~KARO~第一幕

鬼 /火炉の贄

side 和子



「和子様、湯浴みの時間でございます。」

「……はい。」



名も知らぬ村の村人に襲われ、私が鬼の生贄になって1ヶ月。未だに私は生きている。

それも、これまで体験したことのないほどの贅沢な暮らしで。


毎日2回、朝夜、私は湯浴みをさせられる。補助として侍女が2人傍について、身体を洗われた。

そして火炉はそれを、なぜかそこにある椅子に座って不機嫌そうに眺めている。


数日は戸惑った。なんせ裸を見られるのだから。女の鬼とはいえ侍女に、自分でもあまり触れない部分を念入りに洗われるのは嫌だ。


それに、火炉。人の裸を見ておいてそこまで毎回不機嫌にならなくても、と思う。だけど火炉に直接言えないのは……。

「気持ち良いか?和子。」


「……はい。」


必ず、私のことを気遣ってくれるからだった。


確かに不機嫌そうなのに、火炉は私から視線を外さない。


そして。


「和子様。」

「あ、はい。」


なぜか首筋だけは、侍女が洗うことを禁じられているようだった。


差し出された物はふわふわで、水を含ませれば優しく身体を洗える。

鬼の住処は、想像していたものと大きく違っていて、とても綺麗。


鬼は食らう側、人間は喰らわれる側。太古の昔からそうなったせいか、人はやがて文明というものを手放した。




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