火炉~KARO~第一幕



「皇帝側に、不穏な動きがございます。」

「ほお。」

「この間、城内で人を殺めましたからね。さっそく時が動いているようで。」



まつりごとの場。椅子に座る俺に寄りかかり、和子が寝息を立てていた。


元の椅子は1人掛け。王にふさわしい装飾を施されていたそれは、今やここにはない。


和子を膝の上に乗せ政務をしようとしたら、怒られてしまったのだ。だからこうして、2人が腰掛けられるものへと変えた。


小声で話す、桜土と羽水。


「戦争になると人が死ぬぞ。」

「術で死んだ人間はマズくて食えんからなぁ。」


嘆く各国の王たちも小声で話すのだから、笑えてくる。みな、和子に気を使っているのだ。この小さな妻が今なぜここで寝こけているのかを知っているのだから当然といえば当然。



---和子は、夜眠れなくなった。


いや、常に、か。



「はっ、あ、」

「和子。」



脂汗を浮かべ、俺の顔を見るなりあからさまにホッとして見せた和子。あの日、琴が和子を攫ってから、毎日繰り返していることだ。


和子は、眠れなくなったのだ。眠ればあの部屋に戻っているのかもしれぬと恐怖しながら、毎日疲弊して生きている。



時に見せたのは無駄だったのかもしれぬ。ただあの医者は和子が普通ではないと診断したに過ぎない。




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