火炉~KARO~第一幕

父親 /地獄と地上

side 周防



「お久しぶりですね。」


背後から声をかけられ振り返れば、久しぶりに見る息子が私へと軽蔑の視線を向けていた。



「なにか用か?」


息子になど用はない。興味を失って再び歩き出せば、背後で時の足音が聞こえる。


こうして幼い頃は、よく私の後ろをついて来ていたものだ。親の愛情を求め、無垢な笑顔で。



しかし私の子であるとしても時は、私の中での位置づけは他の人間たちと変わらない。


愛情など、浮かぶはずもない。私が愛するのは偉大な父と、唯一この世に存在する妹だけだ。




「あなたほど最低な人は見た事がありません。」



時には、こうして悪態をつくだけの感情が私にあるらしい。憎悪は愛から生まれ、愛は執着から生まれる。



「そうか。それは大変だな。」

「っっ、」



和子もこうして、単純ならよいのに。


頑固にも我が妹は自分の立場の重さに気付かず、あの鬼の腕の中で笑っている。



「私はっ、お前を許しはしない!」



帝都の広い廊下に響き渡った怨嗟の言葉。鬼の血が薄れているとはいえ、時の言葉はピリピリと空気を震わせ、私を追い詰めようとする。


それは俺に時への愛情があれば、成立することだが。



「許さなくても良い。お前は試しに作っただけなのだから。」

「っっ、」



妹の持つ大きな力。それを自分にも引き出せるのか。そう思った俺は人の女との間に子を設けることにした。



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