火炉~KARO~第一幕




「父さま、父さま。どうか僕を見てください。」



時の縋るような声はひどく震えていて、悲しみの涙が溢れ出る。もはや、時の心は粉々に壊れていた。それほど彼は周防という父を求め続けていたのだろう。


「鬼?鬼を殺せば私を見てくれるのですか?」


誰かに話しかけている時。もはや自分がいつの時代の自分なのか、認識していないようだ。


「いや、私はもう父になど興味はないのだ。」


壁に突き刺さる、机に刺さる、床を突いた刃物たちが震え、共鳴していた。時の今にも爆発しそうなほどの寂しさに。



王が溶かした刃物以外が一斉に宙に舞う。ゆっくりと的を探すように、刃先が動く。


「どこだ。」


ぎょろりとあたりを見渡す時。人のために心を痛め、人のためにその半生を捧げていた、あの医者の姿はもはやこの場にはいない。



「どこだ!」


探し人は、誰なのか。それは実の父であるのか、それとも。


どちらにせよ、ここで暴れたとしてももはや何になるわけでもない。時の父はもうこの場にはおらず、その妹の和子もいない。



給仕係たちは化け物を見るような目で時を見つめ、あれほど慕っていた皇帝は屍と化している。



あんなにも、心穏やかに笑っていた青年が。



ーーーもはや、見る影もなく、味方もいないのだ。


なんと悲しく、空しいことよ。



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