火炉~KARO~第一幕

火炉 /月夜の見た世界

side 月夜




そこには、人生があった。



・・という名の、王。


彼の人生には栄光しか存在しなかった。それなのに、彼は初めて、自分に疑問を持った。



和子という名の、ウツワと出会ってしまったことによって。




「和子。」



王は毎日和子様の名を愛おしそうに呼ぶ。

慈しむように抱きしめ、体を自らの手で清めそして、抱きしめて眠る。



だけど。


「は、和子。」



彼は、数か月に一度、急激な飢えに襲われた。



苦しむ声は彼女の血肉を求め、口端に滴る涎は何度拭ったとしても湧き出てくる。


食欲を宿したその赤い目はウツワを殺意ある目で見つめ、彼は毎度自分の欲求に負け、ウツワの首に歯をたてた。



泣きながら和子様の血を飲む王の血の涙と、和子様の血が混じり合い、それから香る愛の香りは、私の食欲をも刺激する。




雷知のいないこの部屋。血を吸われた和子様の首にはくっきりと傷が残ったまま。


それを見て王は、気づく。



自分が再び、食欲に負けてしまったことに。



苦しみを吐き出すのを嫌がるように、王は歯を噛み締め、言葉を飲み込む。しかし部屋に静かに響くうめき声は、彼の苦悩を表していた。



だけど、私はそんなに気に病むことはないと思うの。



王が和子を食べる度、血が混じり、涙を流し続けるたび、和子様の瞼が、少しだけ動いているような気がするから。




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