火炉~KARO~第一幕

鬼 /恋心

side 火炉




一つ分かることは。



「和子、来い。」

「っっ、嫌です。」



この贄が俺にとって、これまで飼っていたどの贄よりも美味で、最高の存在だということだ。


再び背を向ける和子は、あの贄に嫉妬した。それが先ほど一瞬だけ見せた愛情のせいなのだとしたら。


「和子。」

「きゃっ。」


今腕の中に引き寄せたこの女を大事にすればするほど、こいつの味はより甘美になり、最高なものへと変化していくだろう。



「妖術を使うなんて、卑怯ですよ!」



何を怒っているのか、俺から離れようと必死なこの贄は、不幸なことに鬼である俺を好いているらしい。


どこにそんな要素があったのか理解できないが、恐らくこいつらしい理由に違いない。



「和子。悪かった。」


優し気に囁けば、和子の体から力が抜ける。それだけで甘い香りが漂い、喉が鳴るほどの食欲を覚えた。


「もう、他の人間は食わん。」

「……別に、そこまでしなくても……なんでもありません。」



和子が時折出す同じ人間への感情は冷たく、淀んでいる。時に贄の中には家族のために食われる者も多くない。家族を想い、村を想う。


綺麗な感情は反吐が出るほど不味く、気分を悪くさせるものだ。




0
  • しおりをはさむ
  • 4955
  • 10823
/ 492ページ
このページを編集する