乙女党企画 

 2014/03/25/Tue 






 トントンと靴底を鳴らす。

「ねー、早くしてよ」


 急かすように強く打ちつけると貧乏揺すりっぽく聞こえてきた。



 ここは帝都大学にある医学部の研究室。

 散らかり放題の混沌とした部屋の中。
 椅子に腰かけた姿勢で鞄を抱え、唇を尖らせる。


「こっちはお腹すいたんだからー」


 窓の外は真っ暗。
 壁かけの時計も、夜の9時を回っている。


 それを見て空腹だったことを思い出し、ますます切なくなった。



「だったら、君が決めたらいいだろう」

 抑揚のない低い声音が、室内に響く。

 視線をあげた先に、細身の男が立っている。
 白衣を脱いだり、部屋の鍵を探したり、帰り支度を始めたばかりだ。

 後ろ姿から見える横顔は端正だが、寝ぐせだらけの髪や皺だらけのシャツとかが残念だ。



 ヤツの名前は雨宮 孝【あまみや たかし】。
 この大学で講師なんかをやっている。



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