月神去来

当時カトリック教会は魔女術を鎮静しようと長年に渡り努力してきたが、古代から続く月の女神の宗教は広範囲に広がっていて鎮める事が困難だった。教会は魔女達が崇拝しているのは悪魔(サタン)であると主張していたが、魔女達が実際に崇拝していたのはサタンではなく月の女神ディアーナだった。イタリアの農夫の女達が用いていた小さな本『魔女達の福音書』によれば『ディアーナは万物の創造以前の最初の創造物である。彼女の中に万物の全てがあり彼女が自分自身を分断した時、彼女の分断した部分から最初の闇が生まれた。ディアーナは闇と光に分かれた。ディアーナの半身から生まれた光はルシファーという名で彼女の半身にして兄妹になった』と記されている。『福音書』によればこのディアーナとルシファーの間に一人娘アラディアが生まれた。アラディアは後に地上に降り立ちディアーナから伝えられた魔術を地上の弟子達に指導して広めていった。アラディアは地上を離れる時『毎月満月の夜には人里離れた所に集い魔術の女王であるディアーナを崇めよ』と弟子達に言い残していった。そして、その教えが月の女神ディアーナの信仰として現在も語られているのである。

「女神といえば月子神を機織の女神として信仰する国もありましたよね?」

ディアーナの神話のページの終わりに機織の女神としての月神の文章を見付けて遥子は次のページに視線を走らせながら花田の返答を待った。「ええ。ありますね」と言う花田の返答を確認し遥子は自分の調べたメモの内容を簡単にまとめながら確認を取る。
世界の多くの農耕文化において農神と並び女性の重要な仕事とされてきたのが機織であった。ポリネシア神話に登場する月の女神ヒナ、メキシコ神話の月の女神ショチケツァル、古代インド神話で知られる書物「リグ・ヴェダ」に記されているいる夜の織女バヤンテイ、エジプト神話の月の女神ネイト、トルコ神話の月の女神イリテユイアなど、彼女達は機織女として信仰されている。

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