One Night  第二章

第二章 偽善 /8

乾いた空気が少しずつ湿り気を帯び、空が低くなってくる。
頬に当たる風が温もりを含み、花の香りを運ぶ。


不意に届いたその香りに足を止めて見上げると、そこには満開の桜があった。


桜は堂々と、その姿を見せ付けるように佇《たたず》み、まるで威嚇するかのように風に桜色の花を靡《なび》かせる。


一切の後ろめたさを感じさせず、凛と背筋を伸ばしているような桜の姿に、わたしは責められているような気分になり、無意識に目を逸らせた。


桜が風に靡く。
サワサワと音がする。



――4月。
わたしは高校二年生になった。

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