One Night  第二章

第二章 偽善 /9

「うん?」


伸ばしたわたしの手はしっかりと、ヤシマさんの腕を掴まえた。
その手で空《くう》を切る事はなく、当たり前にヤシマさんの実体を掴まえた。


その途端に物凄く、ホッとした気分になった。
常識的にヤシマさんが煙じゃないと分かってるけど、本当にそうなんじゃないかと思い始めていた頃だった。


突然手を伸ばしたわたしを、ヤシマさんは驚き「うん?」と声を出して見つめる。
その、人間として当然の反応が涙が出るほど嬉しかった。

……という事は、やっぱりわたしは限界だったんだと思う。


「どうかしたか?」

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