One Night  第二章

第二章 偽善 /15

去年の今頃の事を思い出してみると、それはまるで遠い昔の記憶のようでぼんやりとしている。


大変だったという感覚はあるけど、どれ程大変だったのか思い出せない。
辛かったという感覚はあるけど、どれくらい辛かったのかは思い出せない。


詳細を思い出してみようとすればする程に、それは“今のわたし”という存在の解釈を経て変わっていく。


例えば、“確か”こんな事を話したという事が、何度か思い出している度に、“確実に”こんな話をしたという風に塗り替えられる。


と言ってもそもそもわたしのバカな脳が、一語一句間違いなく、会話の内容を覚えているという事がまずあり得ないのだけれど。

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