One Night  第二章

第二章 偽善 /『よく分からない話』

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 男がそれを知る羽目になったのは偶々《たまたま》だった。


 朝から生憎《あいにく》の天気で午後には雨が降り出した。
 その所為で仕事が昼過ぎに終わってしまった男は、特にどこかに寄る当てもなく真っ直ぐに家に帰った。


「ただいま」とすぐに言わなかった理由は分からない。
 ただ家に入って何かが変だとすぐに気が付いた。


 しかし男は喚くでもなく、ソロリソロリと足音を忍ばせ中に入った。


 襖《ふすま》の向こうから声がする。声だけではなく音もする。

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