One Night  第二章

第二章 偽善 /『よく分からない話』

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「今日も帰りは遅いのですか?」

 仕事に出る間際の玄関先で妻の言葉に男は顔を上げた。


 妻は優しく微笑んでいる。
 男も優しく微笑んだ。


「あぁ。ゆっくり帰るよ」

 男は笑みを絶やさずそう答え、重い足取りで家を出た。


 振り返り、思う。


 自分は一体何が可笑しく笑っているのだろうかと。
 一体何の為に笑っているのだろうかと。


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