One Night  第二章

第二章 偽善 /6

ヤシマさんを追い駆け喫茶店を出ると、店の前にその姿はなかった。


店の前のエレベーターは2階に止まっている。
ヤシマさんはどこに行ったんだろうと辺りを見渡すと、非常階段の方から微かに足音が聞こえた。


今から階段で追い駆けても追い付けないからと、エレベーターに飛び乗りボタンを押すと、ブーンと機械音を立ててエレベーターは階下に降りていく。


軽快な音と共に1階に着いたエレベーターのドアが開き、そのドアの数メートル先に、こちらに背を向けヤシマさんが立っていた。


「あの……」

さっきのマサムネさんへの態度からして機嫌が悪いのかも知れないと、恐る恐る声を掛けると、ヤシマさんは一瞬だけわたしに目を向けすぐに逸らせる。

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