檸檬喫茶の魔女

五月の薫風




いつか別れる寂しさを、私は受け入れることができるだろうか。

今が永遠ではないことは知っているけれど、解ってはいない。

現実から目を背けて、蹲って怯えて、ひとりぼっちでいいと子どもみたいに駄々をこねた。

それでも君は————私に手を伸ばす。







***





白いチョークで黒板に翌日の担当者の名前を書いて、一息つく。

本来であれば、日直はふたり体制だけれど、もうひとりは体調不良で午前中に早退してしまった。


日直の仕事を終えて、教室の明かりを消す。どこからかブラスバンドの演奏が聴こえてきた。


そういえば、クラスの人たちのほとんどが部活に入っているらしく、担任になにか入る気はないのかと聞かれた。入学したときに渡された入部届は白紙のまま、机の引き出しの中に眠っている。


私は部活には入る気はない。特別なにかやりたいことがあるわけでもないし、入れる気もしなかった。

迂闊に誰かに触れてしまえば、また問題が起こるかもしれない。



「清白さん」

ひとりぼっちだった教室に私以外の声が聞こえてきた。振り向くと、八城くんが入り口あたりに立っている。


「この後、一緒に行ってほしい場所があるんだけど時間ある?」

「え、うん」

「よかった」

まなかの件があってから、私と八城くんは友達になった。

学校でもよく話しかけてくれるので、周囲からは妙な噂を立てられているけれど、八城くんは言わせておけばいいなんて笑っていた。


小学生の頃は魔女と呼ばれ、気味悪がられた。中学に上がっても私のことを知っている人が噂を広めてしまい、孤立した。

一緒に学校帰りにどこか寄る友達なんて今までいなかった。






0
  • しおりをはさむ
  • 23
  • 4156
/ 120ページ
このページを編集する