こじらせたのは君のせい

故意 /涙

*久保田












2学期が始まった。







夏休み早々に引退した僕たち野球部員も
遂に受験モードに突入していた。



今の成績では推薦入試は望めない。
これからの数か月が正念場だ。






「あれ?」




今、川村さんを見掛けたような・・・


でも、雰囲気が・・・




上靴に履き替えると
気になって姿を探してみた。






やっぱり・・・







僕に気が付き
彼女がこちらを見て立ち止まった。






「え? どうしちゃったの? 川村さん。」


「・・・」






「何か・・・ 痩せた?」


「・・・」





「っていうか ・・・やつれた?」










「はは・・・ 先輩ってば容赦ないな・・・」








「あ ・・・ごめん。」













「私・・・」


「・・・」








「フラれちゃいました・・・」


「・・・え?」







「へへっ・・・」









不意打ちだ。



どうしたらいい?

キョロキョロ辺りを見回したって答えがある訳がない。





動揺している!
パニクっている!
心臓のバクバクがもうヤバい!





こんな状況の中
あたふたしながらも


不謹慎かもしれないけど・・・


いや、きっとこれは僕だけじゃない ・・・はず。



男なら多分・・・









乾いたコンクリートの床




「川村さん・・・」





パタッパタッ







僕を見る歪んだ笑顔








胸が苦しい








「先輩・・・」



ポロリ






「・・・う、うん。」



またポロリ







これはもう攻撃されたに等しい。







「先輩?」




いつもとは違う鼻にかかった声







「お、俺で良かったら・・・」



目の下を滑る光る指先






「えっと・・・ あの・・・」


「・・・先輩?」






もうヤバいよ・・・



「い、いつでも ・・・話聞くから!」









「ありがとうございます。」


両手で涙を伸ばし笑った彼女に





「あっ、これ・・・」


ポケットに手を入れ





「良かったら・・・」



取り出したハンカチを渡した。





彼女の手に渡ったそれは
頬をつたう涙も
嗚咽とともに溢れ出してくる涙も
吸いこんでいった。








チャイムの音



僕に背を向け、二年の校舎に向かって行く彼女と
その姿を見守る僕。




「久保田ぁ、何ぼさっとしているんだ?
急がないと遅刻だぞ?」



通りすがりの先生の明るい声が
放心したまま固まっていた僕をほどいた。







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