漆黒に、華の紅【完】

京男






「いやぁ、久しぶりやなぁ、華」


『……』



「ほんま東京は人多いなぁ。 まるでゴミのようや」


『……』


「なんで そない死んだ魚みたいな顔しとるん? なぁ、乃片さん」



「そうですね。 嬢は昔から死んだ魚の目をしています。


ということで、嬢、後は頼みます」




何がということで、なんだ。


乃片は突然私を呼び出したかと思うと何だこれは。


「交通量多いなぁ。 空気が淀んどるわ」




さっきまではしゃいでいた顔を歪ませて文句を言う目の前の京男。


覚えているだろうか。


神楽だ。




主張先の西を纏める あの 神楽だ。




そいつが、何故、この東に居るかというと。



「久しぶりに長期休暇取れたんや〜。 観光案内してや!」



…らしい。



ふざけんな、こっちは年明けで仕事で忙しいんだよ。



文句を言う訳にもいかず、文句という文句を押し込んで溜息を吐く。




『……どこ行きたいんだ…』



そうボソリと聞くと、神楽の顔がパッと華やいだ。




「歌舞伎見に行こに!」



あっちでも見れるだろうが……‼︎


煮え滾る文句が今にも口をついて出そうだが、何とか押し込んで再び溜息を吐いた。


「さっきからため息ばっかしよって…幸せ逃げんで!」


放っとけ。



ツンとそっぽを向いて歌舞伎の劇場に向かう。








あぁ、仕事進めたい。

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