漆黒に、華の紅【完】

事実





「何で俺が駆り出されるんだよ」


『お前、私の側近だろうが』



不機嫌そうに私を睨む奨人に溜息を吐く。



まぁ寒いかもしれないが我慢しろよ。


尚も不満そうな奨人は私の後を歩きながら白い息をじっと見つめた。





この前落として壊れた私の携帯。


を、買いに来た。



今日の予定には巡回も情報収集もなかったから外に出る予定じゃなかったのを、私のせいで出る羽目になった奨人は朝から不満たらたらだ。



「寒い凍える」


『そのまま死ね』


寒い寒いと言う割に口が滑らかに動いて言葉を発するので、もう凍えてその口閉じればいいと思った。




「あ、そういや…」



『……?』


呟くようにそう零した奨人は思い出した内容にか、はたまた声を出してしまったことにか…溜息を吐いてまた歩き出した。



『何だ』


「いや、何でもない」



何でもない訳あるか…立ち止まって先を進む奨人の背中を見据えた。



……あれ、



「どうした?」



奨人が振り向いて私に問いかけるが、それどころじゃなかった。




少し駆けて奨人に寄り、背中に手を添える。


「おい、何だよ」











こいつ、こんなに小さかったか?




瞳が揺れて、上手く焦点が定まらなかった気がする。



だけど、それでも奨人の痩せた背中が分かるほどに奴の体は細くなっていた。




呆然とする私に、奨人は気づかれたことに気づいたのか、そっと私の手を払った。




「もう寒ぃし行くぞ」




奨人の背中がまた遠ざかる。





……何で、なんだ。





こいつも。 透も。 蓮も龍も、珱人も。

あの時の、ヒカリだってーーーーーーー









ぎゅっと拳を思い切り握ると、プツリと爪で皮膚が裂かれた。



その痛みさえも麻痺するほど、






心が、はち切れそうだった。






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