漆黒に、華の紅【完】

兄弟







まだまだ寒さも残る中、ガヤガヤと五月蝿い繁華街を一人横切っていた。




それも、安定の蓮に無理矢理呼び出されたからだ。



「9:00にシフォンに来て!」




シフォンとは前も言った、蓮の経営するキャバだ。


だがあの店は格式が高く、あまり風俗的な雰囲気はない。


言うならば楽しく綺麗な姉ちゃんとお喋りみたいな。



それでも人気を誇示するのはやはり蓮の商売方法などに才があるからだろう。




今日は透が休みで奨人は出掛けていたので一人だ。




最近、奨人は一人で出掛けることが多くなった。


それに、一目見て分かるほどに痩せ細り、衰弱しているように見えた。



何かあったのかと詮索するのも透に止められる。



透は何か知っているのかと思っていたが、拳を握って奨人の青白い顔を見ている辺り、全くと言っていいほど知らないのだろう。



……私と、同じで。




目を伏せて歩き続けると、いつも通りの煌びやかな外装に包まれた店に着いた。




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