漆黒に、華の紅【完】

疑惑
















目が覚めて数日が経った。



『う゛…』


「華…」



心配そうな珱人の声が聞こえるが、それに構わず目の前のバケツに向かって内容物を吐き散らす。




あの、大泣きしながら珱人に縋った日から日にちが経ち、あまり傷口も痛くなくなってきた今日この頃。



だけど、すこんと代わるようにして食欲が抜け落ちてしまった。



それどころか、食べ物の匂いを嗅ぐのも辛い。


今はお見舞いで貰うフルーツをつまむ程度で、病院食には全く手がつけられなくなっていた。




そして今のように嘔吐感が込み上げて動けずベッドの上でバケツに向かって吐くのもザラではなかった。





流石に可笑しいと汲んだ看護師が桜庭に報告して、今日、桜庭に呼ばれる予定だ。








だが、とても辛い。



動きたくない。 怠い。 体が重い。





怪我の反動かと思っていたが、そうでもないらしく看護師も少し不安そうにしていたのでますます不安になる。






「華、ゆっくり息吐け」



『……』


以前珱人のタバコの匂いが気持ち悪くて『くさい、寄るな!』と機嫌悪く言ってしまった以来、珱人は禁煙しているらしい。



これはよく見舞いに来る久登と奨人の情報だ。



透もたまに来るが、きっとあいつなりにまた情報の方を纏めてくれているのだろう。


奨人もそれなりにやっているらしいが、どうも透と比べると目に余るので溜息を吐きたくなる。





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