漆黒に、華の紅【完】

対面














ーーー日というものは、長く感じて酷く短い。






ピッシリと着込んだ真紅の華を咲かせた黒の着物。




昔、何かの時に貰った。




何の時だったか……。 覚えていない。




それはそうと、一週間が既に過ぎた。



今日は桐生の白虎と会う日だ。




あまり実感が湧かず、どことなくボーッとしている時間が過ぎた。




悶々と考えているとスッと襖が開く。






「馬子にも衣装だな」



『喧しい。 クソガキ』




入って来て早々憎まれ口を叩く奨人。



その後ろで「はいはい退いてね、奨ちゃーん」と緩く振る舞う透が入って来た。



「奨ちゃん言うなっ!!」



「はいはーい。 華、そこに座ってー」



私はソファに座らされ、その向かい側に用意されていた簡易的な椅子に透が向かい合う様に座った。





大事な時の会合やパーティーの時は大抵透にメイクやヘアメイクをさせる。




こいつは手先が器用だからなのか、それとも自身が女を弄ぶ為に得たのかは知らないが、腕は認める。



メイクなどしたことがないに等しい私とは比べ物にならない。




……因みにリップぐらいは自分で塗ったことがある。




「目、閉じて」



「口、開けて」



どこか艶かしく聞こえる誘導に溜息を吐きたくなるが、透も真剣にやっていると分かっているので口を出せない。




顔に施されるメイクはいつも濃い訳ではないものだ。



会合の時に他の組の娘も多々来るが、あんなパンダのような、まさに漫画のような顔にはなれない。




あまりにも気持ち悪すぎる。




それを透も好いてない。



まぁ、自分のしたいようにしているだけなのだろうが、私にそのメイクが合っていると思うからいつも任せている。






キュ、とグロスを塗り終わって口の端からその不思議な感触が離れる。




「よし、終わり。 目開けていいぞ」



ゆっくりと目を開けるといつも通り、薄く施されたけれど自分には見えない顔が鏡に映る。




『サンキュ』




「あぁ。」




緩さの無くなった声に立ち上がった透を見上げるとワイシャツの胸ポケットからジッポを取り出した。




「煙草吸って来るわ」




それに頷いてやると、静かに部屋を出て行った。




そして部屋に残ったのは完全に空気と化してた奨人と私だけ。





もう時間も時間だから居間に移動しようとすると、奨人は俯いて腕を組みながら口を開いた。













「……それでいいのか?」








……


『何度、言わせるんだ』












ーーー私は、藤咲の暗華なのだ……












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