漆黒に、華の紅【完】

短編 /三番



「女?」



『そう、女』




珱人が脱いだスーツの上着をハンガーにかけてクローゼットに仕舞いながら報告すると、ベッドに腰掛けてネクタイを緩めていた珱人が素っ頓狂な声を上げた。



「……、本当か?」


『ふふ、嘘ついてどうするの』



クスクス笑うと珱人はキョトンとした顔を一気に綻ばせた。


『多分ね。 まだ断言はできないけど』


エコーでは、なかった。



「京と朔人も喜ぶな」



子育ても落ち着いてきて、京は6才、朔人は4才になった。




それぞれ個性が出てきて、京は周りから何故だと言われるほど私達とは似ていない性格で、とても穏やかで優しい。



朔人は逆に、珱人にとても似ている。



少し無気力でボーッとしていることが多いが、時々とんでもなく母親の私にやきもちをやく。




可愛らしいのだが、珱人の機嫌が悪くなるので遠慮したい。



そんな愛らしい兄弟にもう一人、加わる。


そして



『………またか』


また、麻酔の痛みがやってくる。



3度目とは、自分でもよくやるな、と思った。


医者が言うには、帝王切開はリスクもあるので一人で終わる夫婦が多いらしい。



それが三人目。


奇異な目で見られる訳だよ。



「頑張れ。 俺もついてる。 京も朔人も」



私が隣に座るとすぐに私の頭を引き寄せて抱きしめ、撫でてくれた。




『どんな子になるだろう』


「今度は華に似た子かもしれないな」


『決まったわけじゃないでしょ』


「まぁ、元気でいてくれるならどんな性格でも大丈夫だ」





そっと、少しだけ膨らんだお腹を撫でた珱人はごろん、と私の膝に頭を乗せて寝転がった。








「華の中に居られる赤ん坊が羨ましい」


『馬鹿が』






まぁ、珱人は変わらず変態で甘いが。



父親らしくなった面も、ちゃんとある。

0
  • しおりをはさむ
  • 956
  • 393
/ 322ページ
このページを編集する