漆黒に、華の紅【完】

欲望





珱人side






ゴッ


ガッ



バキッ



ゴスッ








生々しい拳と肉がぶつかる音が暗闇の中、辺りに響いていた。





目をゆっくりと開けて目の前の光景を瞳に写す。





音だけだった世界は視界を取り入れ、現実感を増してくる。





視界の端にゆらゆらと怪しげに揺れる煙草の煙。




手元にあったソレを捨てて新しいモノをポケットからケースを取り出して手に取る。





「くっそぉぉぉおお‼」





雄叫びとは言い難い何とも間抜けな声が響くと同時に自分に拳の影が落とされる。




ゆっくりと目を向けると、最早原型も留めていない醜い顔があった。



その顔から繋がった体の手にはナイフが握られている。




……本当に、バカだな。





バキッ





「ぐあっ……!!」




「よっと、」




「……恵夢」




「ゲッ、ごめん掛かった?」




奴の手を抉るように飛び蹴りをかまし、地面に叩きつけて更にはグリッと半円を描き擦り潰すような動作を加えた。





俺の顔や髪にはナイフの奴の血が飛び散った。





「ごめんごめんー。 てゆーか珱人、こんなに近くに居ちゃ血一滴浴びてもおかしくないよ!」






蹴飛ばしたのはこの、煩く面倒くさい性格の上野 恵夢-Uwano Megumu-。




腕っ節と運転技術 だ け は良いまだ19のクソガキだ。




19の割には弁が立つが。




「恵夢、いつまでそんな汚いモノに足を置いてるの」




呆れた様に言いながら自分に掛かった血を拭い落とす、何かと厄介で恵夢とは違う意味で煩い新井 久登-Arai Hisato-。




「珱人、終わったしもう帰ろう」




「……言われなくても分かってる…」




煙草をぐしゃぐしゃと靴のつま先で擦り潰すと恵夢は「僕も吸いたーい」とボヤいていた。



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