許嫁(いいなずけ)・壱

松江組の跡目 /許嫁が出来た日



大きな日本庭園を望む日本間の一室。

時々なる鹿威しの音を聞きながら、俺は神妙な面持ちで畳の上に正座していた。

広域指定暴力団北陸気鋭会松江組の本宅。

季節は初秋。虫の声が微かに聞こえる。

時間は夜の9時を回った所。まだまだ宵の口だ。




「…で、怪我人が出たわけか。」



吠える虎の掛け軸の掛かる上座に座る初老の和服の男性は俺の祖父。

松江組組長、松江匠吾(マツエショウゴ)。

その斜め後ろに控える様に座るのは俺の親父だ。

松江組若頭。松江匠真(マツエショウマ)。


そしてその2人と対峙してる俺は松江匠(マツエタクミ)。市立中学の3年生。15才。
松江匠真の1人息子だ。




「はい。」




俺は重い祖父の言葉に頷いた。

今俺は昼間に起こした暴力事件の説明を祖父にしているところだ。







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