許嫁(いいなずけ)・壱

好敵手(rival) /幕間4

side 羽川連夜





琵琶湖の西にあるここH市は絹織物が昔から盛んで、夏には盛大な浴衣祭りが行われる。

正確には織物祭りだが夏の風物詩として「浴衣祭り」で通っていた。



ここH市に居を構える、近畿敬侠会七瀬組は、所謂、広域指定された暴力団だ。敬侠会の中での位地は真ん中辺り。

うちのシマには近畿最大のソープ街なんてものもあり、シマそのものは小さいが財政的にはかなり潤っていた。

このシマを狙う奴等に昔、うちの組長夫婦は狙撃された。

犯人1人はその場にて射殺体で発見され、
あと数人居た筈の射撃者は姿を消していた。

その事件で、最初の姐さんの命は奪われ組長は死線をさ迷った。
かなりの時間をかけ退院したものの、その時の怪我で内蔵にかなりのダメージを受けた組長は、完全に回復することはなく、
じわじわと命を削られる病を持つことになった。

それが原因で組長、七瀬快里は、一時かなり自棄になり女に逃げた。

複数の愛人を持ったのもこの辺りで、
愛人達とは、今の姐を迎えるとき関係を切ったが、今だ関係を切れないたった一人の愛人が七瀬奈都の母だ。
色々と背負った面倒臭い愛人。
その理由の一つが彼女の実家が小さいが同じヤクザの組だったこと。

狙撃されたとき偶然来あわせ快里組長や組員達の救護に当たってくれた恩があること。

それらのことから血縁が疑わしい奈都のDNAを鑑定せず娘として養女にしている。



狙撃事件で、かなりの数の優秀な側近が怪我をしたり、亡くなったりして、自分みたいな若輩者が若頭代理を務めることになった。

それは七瀬悠里が若頭に成るまでの繋ぎのようなもの。


当時、頑張って組を支えたのは今は亡き会長。悠里の祖父。
彼が病に倒れた時、
快里組長は愛人を切り、新しく姐を迎え春菜さまを授かった。

跡継ぎの悠里様は自分が教育し、順調に成長中。春菜様もすくすくと愛らしく成長中。夫婦仲も悪くない。
残る火種は七瀬奈都。




そんな中、快里組長はまだ5才の春菜さまに許嫁を持たせた。


それが松江匠。
北陸気鋭会を率いる松江組の跡継ぎ息子。
彼は偶然にも悠里さまと同い年の高校生だった。





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