許嫁(いいなずけ)・壱

迎える為に /気比乃大社祭り




『柱本が10時くらいに着くって。』



俺のスマホに春菜からの着信があって、




「いよいよ、会えるのね。」



「大きくなったでしょうねえ、春菜ちゃん。」



俺の会話を聞いてたお袋と弥生さんは嬉しそうに笑う。
2、3日前から地に足が着いてない感じで、
部屋には祭り見物にと春菜のサイズを確認して花柄の浴衣を用意してある。
側に置かれた赤紫の帯。それと玄関には新品の赤い鼻緒の下駄。

抱いて歩くだろうから、鼻緒で擦り傷も出来ないだろう。


去年は快里さんと何人かの組員も一緒だったが、今年は柱本と運転手と春菜の3人で一泊する予定。

寝室はお袋の部屋で2人ガールズトーク?する気らしい。




「…無理すんなよ。」




倒れたりしたら洒落になんねえし。




「匠。多少無理しても今、やるべき事もあるの。
私がしたいの。させて頂戴。」




お袋は俺に似て頑固だ。

いや、俺がお袋に似たのか。



「大丈夫ですよ、匠さん。私もご一緒します。
ご無理はさせませんから。」



弥生さんの声に頷いた。

どのみちお袋は我を通しちまうだろうし。




「よろしく頼みます。」



信じて任すしかなかった。
年に一度の祭りの3日間、流石に若頭の親父は家には戻れない。
お袋を気にしつつ、今朝家を出たきりだ。





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