許嫁(いいなずけ)・壱

迎える為に /幕間5

side 松江みちる





「みちるママッ。ただいまぁ。」



パタパタと廊下を走り、部屋に飛び込むのは七瀬春菜ちゃん。
私の息子松江匠の許嫁。
まだ小学1年生の女の子。
健康的な薔薇色の頬。ピンクの唇。
肩より長い黒髪を朱色のシュシュでポニーテールにしていて私の誂えた浴衣を着て帯を絞めている。




「暑くなかった?」




ホントなら夕涼みに着せる浴衣を無理に着せてしまった。

だって可愛いんですもの。



「大丈夫。匠がフラッペ買ってくれた。イチゴ味の。」



ぺろりと差し出す舌は人口着色料のせいか異様に赤い。



「匠も天城もイチゴだったの。葉崎はメロン味でね、カメレオンみたいに緑色になったよ。」



ころころと笑う春菜ちゃん、無邪気で可愛い。




「ママ達にお土産。」




春菜ちゃんが差し出したのはベビーかすてら。



「匠がね、2人はベビーかすてらが大好きだって教えてくれたの。」




「そう。ありがとう。」



私は弥生さんと目配せをしてこっそり笑った。


ベビーかすてらは小さい頃匠が大好きで、私達にお土産にしながら、いつも自分でペロリと食べてしまっていた。


ちゃんと覚えていたらしい。
嬉しくて自然と笑顔になる。




「せっかくですから頂きましょう。春菜ちゃんも一緒に。お茶をいれますね。」


笑いながらお茶の用意をする弥生さんに、




「ありがとう。弥生ママ。」


春菜ちゃんはベッドサイドの椅子に座りお礼を言った。



弥生ママ。子供の居ない弥生さんはそう呼ばれるのが夢だったらしく、私と部屋に帰ったあと、しばらくウルウルしていた。

私には見せないようにしてたけど、さすがに長年の付き合いは伊達じゃなくて、空気で分かってしまった。


七瀬春菜。彼女が匠の許嫁になってくれてから松江は賑やかになった。

松江組のアイドルは可愛い私達の娘。

願わくば、何の障害もなく匠に嫁いで欲しいと思う。



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