許嫁(いいなずけ)・壱

謀(はかりごと) /兆し





春菜と祭りに出掛けた翌朝…いや、翌昼?


松江への帰り間際に、真治は首を押さえながら食堂に現れた。





「痛ててっ。寝違えた。」




「葉崎さんっ、何処にいってたんすかぁ~!」




「なに?探してくれてたんだぁ。」



へらりと笑う真治に、




「「「当たり前っす!」」」



「どこを探しても居ないからてっきり…」



「「「琵琶湖に沈められたのかとっ!!」」」



皆の焦る声に真治はキョトンとしていた。




「は?琵琶湖?」




コイツ…覚えてねえのか。まあ、酔ってたから記憶無くても不思議ではないが…。
俺は眉間を指で押さえながらため息を吐く。




「葉崎さん、腹痛くないんすか?」



長尾に聞かれて、




「あ!腹っ!デカイ青あざ出来てんの。
何でだろ?知ってんのか?」



長尾の質問に食いつく真治。



「「「‥‥‥」」」




「お前が酔って、春菜にセクハラしたんだよ。」




皆は口をつぐむし、仕方ねえな…。
俺は真治に昨夜の話をした。



「「「匠さん。」」」




「は?セクハラ?」



「俺の目の前でな。
だから俺が腹を蹴飛ばした。
だからアザになった。

それを知った充が『琵琶湖に沈める』発言をした。

だから皆が焦って、姿を見せないお前を探してた。
以上。」





真治の間抜け面は俺の話が進むにつれ、どんどん青くなり、充の発言辺りで真っ白になった。





「…覚えてないんだけど。」




真治がすがる様に皆を見るが、気の毒そうに目を反らされた。




「「「酒、止めた方がいいっす。」」」





「…だな。」




がっくり項垂れた真治に、笑いながら充が声をかけた。




「…おや、やっと現れましたか。
昨夜はどちらでお休みで?」




「…廊下?」





呆然とした真治の返事に充がにっこりと笑った。




「帰り、葉崎にはお使いをお願いしますね?」










「…もしかして、琵琶湖に?」




「おや、察しがいい!
私の知人の琵琶湖の漁師…」




「ごめんなさぁいっ!」





すべてを聞かず真治が充に謝り、
すがり付いた。








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