許嫁(いいなずけ)・壱

謀(はかりごと) /事件



8月14日。
俺や松江組には忘れられない日になる。



お袋の初盆の法要は13日に済ませ、親父、ジイさん共に春菜を迎える為、今日だけは揃って本家にいた。

半分は口実だな。
俺の部下達が初めて指揮権を取って、デカイ捕り物をするのを見届けるのが目的だろう。

捕り物と言う言い方が相応しいのかはよくわからねえが。


一部の組員達以外には何も知らせてはないものの、
春菜を迎えるだけではない、異様な緊張感を敏感に感じとる奴もいて、




『何かあるんで?』



心配顔で聞いてくる奴も何人かいた。
そう言う奴には躊躇わず事情を話し口止めをした。
勝手に動かれて計画に支障が出ては困る。




騒動が起きるのは墓地。

松江本家の奴等を殺気立たせて、春菜を不安にさせたくはない。

巻き込むにしても、最低限にしたいからな。




今日の計画に関して知ってるのは先日からの会議に出ていた30人弱の組員と、羽川凍夜のみだった。

さすがに春菜の護衛には話さない訳にはいかなかった。




どうやら凍夜も飯田強兵にはうんざりしていたらしい。飯田強兵の素行の詳しい資料をパソコンに送ると、



『…噂には聞いてましたが。』



しばらく絶句し、




『消去してください。』



春菜の護衛としては当然の言葉を吐いた。









計画は完璧。万に1つの間違いも起こさない段取りを組んではいた。
後方では安生達もサポートしてくれる。





「落ち着きませんね?」




安生に聞かれて苦笑する。



「チリチリと首筋の辺りが逆立つ感覚があるんだ。」


一言で言えば嫌な予感。



安生は目を細め、穏やかに俺に笑いかけた。




「天城達はよくやってます。
例えアクシデントが起きても、間違っても匠さんや春菜さまに危害が及ぶ事はありませんよ。
信じてあげなさい。」





アクシデント…それだろうか。嫌な予感の正体は?

信頼はしている。
充の計画は完璧だ。




「春菜を巻き込む事に躊躇いがあるから…か?」




「今回の計画では仕方ない事ですからね。
すべて終わった後で、私も春菜さまに頭を下げましょう。」




安生の笑い声に俺は苦笑して、息を吐いた。






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