許嫁(いいなずけ)・壱

無くしたもの・掴み取るもの /同級生





春菜との入籍はしばらく周りには伏せる事にした。知ってるのは婚姻届けを書いた席にいた真治と充。快里さん、幸乃さん。凍夜。

後は事後報告した橘、親父、ジイさん。七瀬の悠里夫婦と羽川連夜。

…結構いるな。




小田切聡太には話して無いがアイツの事だ。きっとそのうち嗅ぎ付けるだろう。冷やかされるのがオチだしな。照れ臭い。




もしかしてと予感してた俺は用意したダイヤの指輪を春菜に渡した。




「正式な式はちゃんとするつもりだが、これだけは渡しとく。」



春菜の指に指輪を嵌めると



「ありがとう匠。」




涙ぐんで礼を言われた。




「悪いな、ファーストキスも指輪を贈るのも、もっとロマンチックな場所が良かったよな?」



受け取ってもらったのは良かったが春菜の夢を摘んじまったみたいで…





「…匠は優しすぎ。
大事にしてもらえてる。わかるから大丈夫だよ?」




ちょっと背伸びして言う春菜。
無理してるよな。




「…嫁に来たら、もっと大事にしてやるから。」




「…新しいお家で?」



赤くなった春菜は茶化すように口にした。




「ああ。春菜の意見も入ってるしな。」



若頭邸は秋には着工。夏には完成予定だ。





「来年の夏には泊まりに来い。いや、帰って来い。お前の家だ。」




俺はそう言うと涙ぐみ頷く春菜の唇に何度目かのキスをした。









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