許嫁(いいなずけ)・壱

家族が増えた日 /それぞれの決断







「は?弟?」




ある夜、飯を食ってたら、いきなり俺に弟ができた。
マジかよ。




「新しい息子、隼人だ。仲良くしてやれ。」




まだ3才位の男の子を抱っこした親父が俺に言う。

いきなり夕食の席に現れた親父は組員達をパニックに陥れた。




「まじっすか?」

「わ、若頭っ!?」

「え、えっ?浮気っ?」

「バカ、若頭は独身だろ!」



あわてふためく皆を横目に親父を睨む。



「隠し子…じゃねえよな?」


「残念ながら違う。こいつはみちるの生まれ変わりだ。」




「「「「はあ?」」」」





男の子だろ!





箸を置いて立ち上がった俺はガキを抱いた親父に歩み寄る。


ざわつく食堂がしんと静まる。




「親父、真治達が動いてたからなんかあるとは思ってたが、
いきなり騒がすような事はすんな!
皆がパニクるし、こいつを受け入れる準備も出来てねえだろ。」



ひょいと親父の腕の中を覗き込めば、じっと俺の目を見返す真っ直ぐな目にぶつかる。

へえ。物怖じしねえな。

目元がお袋に似てないでもないか。



「隼人か?」



俺が聞くと、コクりと頷く。

てか、ぁあ゛~!!
なんだこの組員達の視線のウザさは。
固唾を飲んで見守るな!


親父がお袋の生まれ変わりを待ち望んでた事は皆も知ってるだろうが!

男の子ってのは想定外だが、まあ、俺的には大歓迎だ。




「松江匠。お前の兄ちゃんだ。」




「たくみ、にいちゃん?」




でかい目をぱちくりさせて復唱する隼人。
かわいいじゃねえか。




俺は隼人の頭をわしわしと撫でると、




「一緒に飯、食うか?」



笑って見せる。



途端に固まってた周りが弾かれた様に動き出した。




「こちらに若頭と隼人さんの席を。」



「飯を持ってこい!」



「スプーン用意しろ!」




バタバタと動き出す周りに、




「悪いな匠。話が急に纏まった。」




親父が照れた顔でぼそりと呟く。




「まったくだ、世話が焼ける。
後できっちり説明してもらうぞ!」



俺は素知らぬ顔で親父達の背後に立つ橘を睨みながら、傍らの充にいい放った。







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