許嫁(いいなずけ)・壱

家族が増えた日 /幕間13

side 天城充






夜の松江本家の食堂。




『一緒に飯、食うか?』





隼人さんにかけた匠さんの声に、若頭と裏部隊の連中はホッと安心した。














裏部隊は今日の午後、須藤杏奈と会う若頭について、K空港近くのホテルに来ていた。


もちろん目的は須藤隼人の確保。


そのため、いつもの密会場所のホテルの部屋の隣の部屋を押さえ、会話を盗聴している最中だ。





「‥‥‥」


「‥‥‥」



シーン…。





って、隣の部屋にいるはずの、若頭と柴田、須藤杏奈と隼人、誰の声も聞こえませんが?





『え?は?故障?』




パニックになって機材のチェックをしてるのは、加賀の次の年に村木辰弥に師事した川口文也(カワグチフミヤ)。


散々マイクテストしてましたよね?


皆に白い目を向けられ青くなっている。






『…服を着なさい。子供の前だろ。
君がどんな格好をして誘っても無駄だよ。
私は君に何の関心も無い。』





不意に大音量で若頭の声が室内に響き、思わず耳と、叫びそうになる口を押さえた。




『はぁ~、黙り込んでたのかよ。』



ぼそりと文句を言う真治。


川口はホッとしたようにマイクのボリュームを絞った。



『裸で誘惑にかかったようですね。』



『余程切羽つまった感じ?』



『無駄なことを。』



私の声に葉崎を始め皆が頷いた。




やがてごそごそと服を着てるような音が
聞こえ、不貞腐れたような女の声が聞こえた。




『おじ様、堅いのね。』




『松江を背負ってるからな。胡散臭い女には近付かない。』




『あら、私と会うの4度目よ。』




『君を気に入った訳じゃない。隼人の未来が気になったからだよ。』




『冷酷で名高い松江の若頭が子供に同情?笑っちゃうわね。』




『竜崎の若頭に捨てられる君の子供に同情しちゃおかしいか。』




たいして可笑しくも無さそうに若頭は笑った。






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