許嫁(いいなずけ)・壱

家族が増えた日 /弟と友と





隼人が本家に来てから、何気に賑やかになった。




「隼人さん、こう、箸はこう握るんです。」



「こ~?」



「‥‥‥」



ぶん!



今まで箸トレーニングを受けなかったらしく、無理に握らされた箸は空を舞い床に落ちる。



から~ん。



足元に落ちた箸にきゃっきゃと喜ぶ隼人。朝からご機嫌だな。



「もう!ご飯食べられませんよ?」




めっ、と皐月さんが睨むと嬉しそうに更にきゃっきゃと笑う。




「皐月さん、これを!」




見かねた組員が渡したのはエジ※ンのおはし。
いわゆる躾箸だ。




「…こんなもので教えるなんて屈辱だわ!」




皐月さんが項垂れながら、隼人の指に箸を装着した。
どこが屈辱ポイントなんだ?



「…投げない。」




皐月さんが肩を落とす。
いや、振り回しても取れないだけだろ。




「隼人、ちゃんと箸で食え!」




見かねて口を出すと、




「…あい。」



殊勝に返事して素直に箸を使うから、皐月さんとは遊んでたんだろう。


コイツはガキの癖に自分に甘い人間を本能で見分けてやがる。
いや、ガキだからか?



基本、俺の言うことは素直に聞く。







じっ…




そして、言うことを聞いた後は、期待の眼差しで俺を見詰める。


仕方ないな。





「頑張ったな。偉いぞ。」



俺が頭を撫でると、




「あい!」




嬉しそうに笑い、また箸を使いだす。




犬みたいなやつだ。
かわいいが少々面倒くさい。








『恐ろしいですね。周りを振り回してますよ?』



『罪のない顔して、先々こわいっすね?』



わざとらしく口にして毎日の様に遊んでるのは、真治と日向。
最近日向は毒されて真治化して、軽くなってきた。




『なに遊んでるんですか!』



充に冷たく言われて、




『ごめんなさい』


『すいませんっ!』




部屋の隅でこそこそと謝ってやがる。





『あまぎ~!』




そんな充は何故か隼人のお気に入りだ。





『…おはようございます。隼人さん。』




律儀にお辞儀する天城に、



『はろ~ごじゃいますっ。』



舌ったらずで挨拶をする。
可愛いもんだ。
皐月さんが身もだえてる。





『お、は、よ、う、ご、ざ、い、ま、す。』




ちゃんと言えと、充がやって見せる。




『お、は、や、う~すっ。』



隼人が挫折した。




『申し訳ありません。3才児には高度過ぎましたか?』



嫌味に笑いやがる。

大人気ないな。







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