許嫁(いいなずけ)・壱

平穏 /幕間14

side 加賀勝彦






「ふう~っ。」




匠さんへの報告を終え、部屋を出た所で大きくため息をついた。


まったく、俺にこんな役割をあてがうとか、天城さんは鬼だな。







『匠さんへの報告は加賀から。』




言われた時は冷や汗がでた。
冗談だろ!



いや、報告自体はいい。普段話せない若頭補佐の側に行けるんだ。

テンションも上がる。


だけど、なぁ。



『報告するのは当たり障りのないことだけです。』




「え…?」




『特に、須藤杏奈が病院を訪れた日が特定出来た。等の報告は口外無用で。』




「相手は若頭補佐ですよ!?」



匠さんに隠し事とか。
俺、心臓持たない!




松江には今現在6人のハッカーがいる。
皆、半年以上村木辰弥に師事した奴等だ。

実際、春休み限定で病院に向かう須藤杏奈の車の映像を探すのは、半日で調べ終わっている。



須藤杏奈が病院を訪れたのは春菜さまが七瀬に帰って3日目。


春菜さまの様子がおかしくなった辺りと合致する。



かなりの確率で須藤杏奈は春菜様に接触したと考えられるが、それを話すなと天城さんは言うのだ。




「嘘つけってんですか?」



俺は天城さんを恨めしげに睨んだ。




『きちんとした報告をしろと言ってる。』





睨み返された。

半端無く怖いんだけど!

さすが若頭補佐の懐刀。

背中を冷や汗が伝う。勝てる気がしねえ。




『春菜さまの行動確認がまだ取れていません。


今その報告をしたら、須藤杏奈が原因だと思い込んでしまう。』





他に原因があった場合、
思い込みは危険です。と至極真面目な顔で言う。
須藤杏奈の生活状況もまだわからない。





『大丈夫ですよ。
匠さんはちゃんと分かってますから。』





「…俺が嘘をつくことを?」




それ、いたたまれない。




『バカですか。
私達が匠さんの為に動いてる事をです。』




「…はい?」




『私達が隠し事をするのは【匠さんの為を思ってだ。】と言うことをです。』



「‥‥‥」









かくして俺の報告は無事に終了した。




「失礼しました。」




頭を下げた俺に匠さんは苦笑して、




『充に何か言われたろ。
報告ご苦労だった。
詳細がわかり次第、直ぐに報告を頼む。

うやむやにして自分達で処理すんなよ。』




笑いながらだが、覇気が半端無くて、滅茶苦茶体が強張る。

マジで見透かされてたのかよ。

天城さんにしても匠さんにしても、俺とは格が違いすぎる。
さすが松江の若き覇者と側近だよな。














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