許嫁(いいなずけ)・壱

解ける糸 /不快指数





「ああ゙?春菜は隼人が俺の実子だと疑ってるだぁ?」




何時もの様に然り気無く部屋に現れた充は、トンでもない地雷を俺の足元で爆発させた。




「はい。

まあ、疑われた匠さんの愛し方にも問題はあるかと?」




サラリと吐かれた台詞にムカついた。




「はあっ?これ以上どうしろっつんだよ!」




だいたい何でそんな発想になる?
隼人の父親が俺なら、春菜は俺と隼人の母親が関係を持ったと思ってるって事だろ。

情けなくてマジで凹んだ。




「失礼しました。報告書です。お気持ちはわかりますが逆ギレしないで下さい。」




充はアッサリと謝り俺に頭を下げて、パソコン画面を俺に向けた。

そこには須藤杏奈の半生が事細かに書いてある。





「‥‥‥」




苦労して流されながらも意思を貫く。
そんな女の姿が目に浮かぶ。
流石、隼人の母親だと思う。




この女と数分会話を交わして、春菜は俺を疑ったのか。




「クソっ!」




悪態もつきたくなる。
俺はもう5年も春菜を抱くのを我慢してるってのに。
籍まで入れて、それでもまだ疑われるなら、我慢などせずに…

小学生でも中学生でも構わねえ、




「押し倒しときゃよかった。」




呟く俺を充が不安げに見てるのはわかったが、
荒ぶる感情が上手にコントロール出来ない。




「充。悪い。」




「はい。」




「そのパソコン、暗証番号は打ち込んである。
そのまま文章を打ち込めば春菜に届く。」




「匠さん?」




「春菜に暫く通信は休みたいと、そう書いて送ってくれ。
文面は任せる。」




そう告げて部屋を出る。
充のため息は無視した。

春菜にちゃんと真実を知らせてやらなきゃと思いながら、
今は冷静になる自信がなかった。

余計な言葉を書き込んで春菜を傷つけそうだった。






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