許嫁(いいなずけ)・壱

解ける糸 /美人秘書




『――ですから、インド人と上手くやりたいなら、先ずは―― 』




広い会議室の中、ケイのハスキーな声が響く。




真弓グループ傘下の水産加工会社の本社ビルは、もちろん松江のシマ内に在った。

福岡、広島、東京には支社もあり、海外拠点としてインドに駒を進めようとしている今、これから進出するインドの状況を、英京が日本の水産加工会社の重役達に説明しているところだ。


















二時間に及ぶケイのインド支社の概要説明とちょっとしたミニ知識は聞き応えたっぷり。
併せて英慶が美人だったこともあり、なかなか盛況のうちに終了した。






「どうでした。ボス?」




にこりと笑うケイは自信たっぷり。



良い出来だったと誉めれば余裕の笑みを浮かべた。

さすがに充のメガネに叶った人物だけある。




もとは『マルミ』という小さな水産加工会社をジイさんの代に手にいれ、
今は『真・マルミ株式会社』になっていた。

相変わらずネーミングセンスは最悪。それでも耳慣れると不思議なものでなんとも思わなくなった。





「素晴らしい説明でした。」



俺と話すケイに、『真・マルミ』の社長が話しかける。
表の顔として世間に高名な彼はもちろんヤクザとは無縁。
経営方針は俺が決めているが松江匠の名前が表に出ることはない。

『真・マルミ』は表向き松江とは無関係だ。




俺は今回はインド側の関係者として会議を見学していた。

当然ながら社長を務める添田彰(ソエダアキラ)は俺の正体を知っている。






「ありがとうございます。添田(ソエダ)社長。」




にこりとケイに微笑まれ、50才で最近孫が生まれたばかりの添田社長は赤くなった。




「相変わらず中年キラーで頼もしい。」




充の声に吹き出しそうになった。
ケイの見た目からいろいろな利用価値を見いだしてるらしい。




先ずは説明会。
広報活動が忙しい。

表に出るのはケイだけだが



「出来るだけ匠さんも立ち会って下さい。」




充がそう言うのにはインドへの進出を進めたのが俺だった事が大きい。


指示を下せばプロジェクトは動き出すが、指示したものとしてできるだけ関われと言うことだ。



もちろん俺もそのつもりで、忙しくなるのは想定内だった。










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