許嫁(いいなずけ)・壱

暴走族のカリスマ /自覚





『緋色』の溜まり場から戻って30分。


俺は橘の私室でパソコンの前に座っていた。

ディスクを差し入れると、組関係の極秘文書がわんさか出てくる。



政府関係。原発関係。まさかの隣国との密貿易迄…。
まあ北陸だから、昔から大陸との貿易とか下地はあるし、今さら驚きゃしねえが…。



「頭が混乱してくるな。」


俺の声に橘が笑った。




「大雑把な概要を30分でここまでつかめりゃ上出来ですよ。」



久々に嫌味無しで誉められた。



「吸いますか?」



橘が差し出すマイルドセブンに首をふる。



「禁煙した。」



「は?」



「肺癌で死んだら俺の役に立てねえんだと。」



「はあ。」



俺の適当な説明に首をかしげた極悪面が、眉をしかめた。





「‥‥‥‥!!」


「‥‥‥‥!?」


「‥‥‥!!」




なんだ。玄関が煩いな。

なんの騒ぎだよ。





「田口!」



橘が戸口に立つ組員を呼んだ。



「へい。」



「玄関の客は誰だ。」



「弓槻舞子さんで…。」




「「ああ゛?!」」




あのケバい女、ここまで来たのかよしつけえな!!



「ひいっ!い、いま安生さんが応対に出てますっ。」


「チッ。様子を見てきます。」



動こうとした橘に、



「…俺がいく。」



「「は?」」



親父は留守だし、組員じゃあしらえ切れねえ。



「俺じゃなきゃ、怒鳴れねえだろ。迷惑だから二度と面見せるなって言ってくる。」




「匠さん…」




どんな未知の生命体でも一応は女だし、怒鳴るのは躇ってたが、正直ウザすぎる。



「いい加減、切らねえとな。」



俺は笑うと玄関に歩きだした。






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