許嫁(いいなずけ)・壱

女子高生の恋模様 /お嬢様の逃亡先



予定より早く帰った桜華学園。

憧れの親友は図書室の窓際の席にいた。

今まで見たことのない憂い顔。




時々ぼんやり外を見てため息をつく。
アンニュイで美しい。


まるで恋する乙女そのものだった。











声をかけたい。


でもかけられない。




迷って迷って、静かに踵を返して向かう生徒会室。


ドアを開けると、中には先客が二人。

葉月胡桃、佐々木梓、書記のふたりが額を寄せ何やら話し込んでいた。



私を見て弾かれたように顔を上げた。




「胡桃、梓も?
もう学園に帰ったの。」



授業は明後日からなのに。





「春菜さん!だって亜依さまがっ。」



「亜依さまが婚約破棄されたって本当ですの!」




詰め寄る2人に眉を潜めた。





「貴女達何でそれを知ってるの。」





亜依さまの婚約の配信先は関東龍聖会と同じ系列会派のヤクザのみ。




「もしかして?」




この書記のふたり…



私の視線にそわそわと目を泳がせて挙動不審になるふたり。

仕方ない。




「近畿敬侠会七瀬組の娘、七瀬春菜よ。」



改めてよろしくと笑うと、二人は驚いたように私を見て、





「「春菜さんもっ!!」」




そう叫んだ。

やっぱり、ね。




「南部貴龍会佐々木組の娘、佐々木梓。」




「南部貴龍会?」




「福岡の生まれっちゃ。」




クスリと梓がやんちゃな顔を見せた。





「私は極北神降会葉月組の娘。北海道札幌の生まれですぅ。」



胡桃は相変わらず舌足らず。札幌弁というより本人の話し方がこうなんだろう。




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