許嫁(いいなずけ)・壱

帰国 /滝谷保の過去

side 松江春菜





匠との通信が復活して表面上は元通りの私達。


浮気してたんじゃないし、私が嫌いになった訳でも無かったんだけど、



でも、いくら心配かけない様にとは言え、
怪我した事や、桜華に来た事まで隠されたら心中は複雑だ。

まだ子供扱いされてるのかなとか、ネガティブな方に引っ張られて行く。



腕を何針か縫ったなら痕は残る筈だし、気付いた私にどんな説明をする気なのか。




「…匠のばぁか!」



最近パソコンに向かう前の私の口癖。









滝谷保とはあれから接点はない。

彼は忙しい片桐理事長の護衛なので滅多に桜華に顔をみせない。
片桐理事長と共に日本全国を飛び回ってるらしい。



『下心ありだ。』



『あんたに聞きたい事がある。』




滝谷保にそう言われてから、かれこれ一月経とうとしていた。



気にはなっていたが、




私、いや、今の桜華は、『志藤組』が初めて開くお茶会で話が持ちきりだった。
主催はもちろん亜依さまで学園始まって以来の生徒間の交流会だった。




学園の花壇にはコスモスが満開。

中庭にテーブルを用意して、イギリス風のお茶会にする予定だ。




『きっと素敵なお茶会になりますわ。』



ふわふわと浮き立つ空気の中、
初めてのお茶会に理事長からも顔を出すと連絡があった。



もしかしたら滝谷保が声をかけてくるかもしれない。



私に一体何を聞こうと言うのか…。


気になって凍夜に滝谷保の事を調べて貰ったが、外人部隊に入る前の情報は皆無だと言われた。

一体どんな過去を隠してるのか。







私から聞き出せる話なんてせいぜい七瀬組のことと松江組のこと位。

どちらも組の仕事には関わって無いし、表の仕事も然り。

組の話なら絶対片桐理事長の方が詳しい気がするのだけど…。




戸惑う一方でお茶会の準備は着々と進み、

10月半ば、
『志藤組』発足の挨拶を兼ねたはじめてのお茶会が行われたのだった。








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