許嫁(いいなずけ)・壱






お茶会当日は秋晴れのよい天気で、中庭での立食パーティーは盛況だった。




「亜依さまのお人柄ですわね。」



「さすがは志藤…いえ、成瀬亜依と言ったところですわ。」



寄せられる賛辞の中、噂のカリスマ美少女は背筋をしゃんと伸ばしてお茶会を取り仕切っている。
いつにも増して凛々しくて美しかった。


理事長が難色を示した生徒間交流を、あっさりやり遂げた生徒会長。




「『志藤組』発足に関われた事は私の誇りですわ。」



満足気に呟いた私に、







「まるで全校生徒が集まってる様じゃないか。盛況だな。」




私に話しかけたのは、我が桜華学園の片桐理事長だった。




「「り、理事長?」」



私の隣にいた胡桃が、驚いて手に持ったマイセンのティーカップを落としかけ、
梓が手に持ったマカロンをポトリと落とした。





「片桐理事長、ようこそ。
亜依さまがお待ちですわ。こちらへ。」





片桐理事長の後ろに立つ滝谷保に視線を向けてから、理事長を亜依さまのところに案内した。





「怖がられているようだな。」




困惑する理事長に、




「理事長は【裏世界のドン】ですもの。仕方ありませんわ。」





本来ただの女子高生の前に姿を現す人ではない。

この人も亜依さまに惹かれた一人なんだろう。




「やれやれ、その名前は幾つになっても外れないな。桜華学園でまで呼ばれるとは。」




理事長は苦笑いをしていた。




「諦めて下さい。
人の口に戸は立てられませんし、女の子なら尚更です。」




私が笑うと、




「さすがは松江の姐になる女だな。」



ボソリと呟かれた。

どういう意味だろう?




「容赦無いし私にも厳しい。
しかも甘い笑顔で言う辺りなかなか強かで計算高い。いや、無自覚か?」




はぁっ!容赦無い?
計算高い?



ぽかんと口を開けて理事長の言葉を聞いていると、


ポンと亜依さまに肩を叩かれた。





「案内ご苦労様。」




「亜依さま。」




亜依さまは私にふわりと笑顔を向けると、




「春菜は天然なんです。
下手に考え込ませないで下さい。」




理事長を睨み付けた。




「‥‥‥」




天然…それって誉め言葉なんだろうか。







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