許嫁(いいなずけ)・壱

進級と夫婦関係 /揉め事の予感




「そう言えば、親父が帰るっつってたな。」




なんとか機嫌を直した春菜は飯を食べ始めた。




「匠真パパ?お出掛けしてたの。」




「ああ。最近よく家を空ける。
お陰で隼人が寂しがって俺のベッドに潜り込みやがる。」




「そうなんだ。挨拶しなきゃね。」




どうやらジイサンと何かやってるらしいが、とんだ弊害だ。





「隼人君は、弥生さんや皐月さんのベッドには行かないの?」




くすくす笑う春菜は首をかしげる。




「なんかな、身の危険を感じるらしいぞ。」




「…なにそれ?」




「2人ともますますデブに…いや、貫禄が付いたからな。
下敷きにされたら死ぬんじゃないかとマジで心配してた。」




「…下敷きにって。」




言われた春菜も想像したらしい。




「…確かに重いかも?」




俺達は顔を見合わせて笑う。
まったりと平和な朝だった。












俺達が親父に挨拶したのは昼前。
2人で親父の部屋を訪ねた。




「久しぶりだな、春菜ちゃん。」




「ご無沙汰してすいません、匠真パパ。」




「なあに、もとはと言えば卒業を待てずに入籍した匠が悪い。
春菜ちゃんは遠慮せず勉強してれば良いんだよ。」





「うん。ありがとう。」




親父は春菜の善き理解者だ。
まあ、言われたことは正論だから俺としては苦笑するしかない。



かなり強引に嫁にしちまった自覚もあるからな。

それなりに好かれてる自信はあるが、俺が溺愛してる事を知られたらドン引きされるに違いない。








「で、匠真パパと匠吾ちゃんは、今何してるの?」




「‥‥‥」




春菜はサラリと親父の虚を突く。

こいつ、天然だな。


言葉に詰まった親父に首をかしげた。




「ん?あ!もしかしたら悪巧み?」




こいつ、マジで凄いな。
口ごもる親父を見てコロコロ笑ってやがる。





「春菜ちゃんには降参だよ。」





親父は質問には答えず、カラカラと声を上げて笑った。








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