許嫁(いいなずけ)・壱

進級と夫婦関係 /裏切り!?




共に歩く男達に



「何を見ても驚くなよ。」



念を押したが、それは自分自身への言葉でもあった。
建物の施錠は既に解かれていて、
ギイ…とドアを開けると、



中の奴等の視線が飛んできた。




「早かったですね。
隼人さんと春菜さまは?」



至極平然と聞いてきた充の声に、




「弥生さんの部屋にいる。」



答えながら、仕置き部屋の中を見渡した。



ふん?


立っているのは充と池本。
床に縛られて転がる男が3人。
側に目だし帽が落ちてるところを見ると、顔を隠しての襲撃を計画していたか。
こんなものを着用したら悪目立ちするだろうに。


顔見知りなのを隠したかったからか。



俺の後ろにいた真治が無言で横をすり抜け、転がる男の胸ぐらを掴み顔を確認した。




「…っ!マジかよ!!」




天窓から差し込む陽の光の中に浮かび上がったのは、よく知る顔で。



仕置き部屋の中の空気が一瞬で重い沈黙に包まれた。







「墓地に潜んで春菜と隼人を待ち伏せて、どうする気だった?
なんて、聞くのも愚問か。

なあ、岩泉。」




俺の声に岩泉が俯いた。




「おまっ、何でだよっ!!
くそっ!!」




真治が岩泉の首を締め付ける。

山都に運転させて当然か。
岩泉がここにいるんじゃな。





「春菜が心配してた。お前の姿が見えないから。」




俺の声に、岩泉がピクリと反応した。




「なあ、岩泉。」




俺はお前の、何を見てたんだろうな。





高校生になったばかりの俺に、松江組から付けられた運転手。

当時の俺と体型が似ていて自称『影武者』だと笑ってたよな。
初めての七瀬への訪問からずっと、俺の運転手として付いてくれて…

春菜も初対面から気にいって、とても懐いていた。













「充、報告を。」




パイプ椅子に座ると俺は目を閉じ、感情に蓋をした。








0
  • しおりをはさむ
  • 5345
  • 4013
/ 849ページ
このページを編集する