許嫁(いいなずけ)・壱




「円城寺礼の話だが、」



「うん?」



俺の言葉に春菜が顔を寄せる。
内緒話にニコニコ見上げる隼人は邪魔だが、贅沢は言えないか。




「弥生さんや皐月さんともめ出すようじゃ先が思いやられる。
お前に対する態度もムカつくしな。」




「…匠。」




「だから明日、ジイさんが帰ったら、直に円城寺礼との関係を聞いてみるつもりだ。」




他にも気になることもあるしな。





「もし、わかったら、」




伺うように俺を見上げる春菜の頬を、俺の膝の上の隼人が撫でた。





「ああ。夜に電話する。」




「ありがとう匠。」



にこりと笑う春菜に、隼人も嬉しいのかニコニコと笑いながら俺の膝で跳ねた。



「隼人。おとなしくしてろ!」




地味に痛いし。
だいたい春菜の頬を撫でるのは俺の仕事だ!
俺が隼人の頭を軽く押さえると、




「匠さんはいいパパになりそうですね。」



「ねぇ。絶対イクメン街道まっしぐらよっ!」




弥生さんの声に皐月さんが頷く。

イクメン街道ってなんだよ。俺が眉を下げると、春菜がまた笑う。



山のような誤解の産物だが、まあ…あえて誤解を解く必要もないか。




「イクメン…ですか。」



俺の行動の裏を理解してる充は、冷ややかに俺を見る。




「確かに、赤ん坊ができたら…
春菜さまを取られまいと釈迦力に世話を焼いて、結果、
イクメンと呼ばれるんでしょうね。匠さんは。」





オイ!変な未来予想するなよ。




「冗談に聞こえないから笑えねえ。」




顔をしかめる俺に、




「思い切り本気です。」




充が面白くもない顔で肩を竦めた。








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