許嫁(いいなずけ)・壱

松江匠吾の決断 /京都での対面






きっちり約束の時間に、円城寺礼の母親は男を一人伴い現れた。

さすがに弁護士。初対面の男に独りで会うほどバカではないか。俺はヤクザだしな。




姿を認め、充と立ち上がり、彼女たちを迎えた。





「貴方が?」




戸惑ったように俺を見つめる女。




「はじめまして、松江匠です。
急にご都合をつけていただいてありがとうございます。連れは天城。秘書のような男です。」




頭を下げる俺達に戸惑ってやがる。
当然か。俺とジイさんは声以外全く似てない。
シングルスーツ姿の俺は、やり手の営業マンに見えるらしいからな。
黒ぶち眼鏡の充も神経質で真面目なサラリーマンに見える。

目を見て軽く微笑めば、女は頬を染めた。

女と言ってもオバサンだが。
営業スマイルは散々やってるから苦でもない。




連れの男は面白く無さそうに俺を見る。

当然か。彼は彼女の同僚の弁護士で、今の不倫相手だ。
心配しなくても、春菜以外興味無いっつーの。




「はじめまして。円城寺桂子(エンジョウジケイコ)です。」




彼女は俺に弁護士の名刺を差し出した。




「彼は同僚の墨田(スミダ)さんです。
お話の内容に不安があったもので、付き合って頂きました。」




さすがに弁護士。頭が良い印象だ。
あのバカ女の母親とは思えないな。




「どうも。」




面白くない顔の男に、俺は微笑みかけて会釈した。



…赤くなるなよ。






コホン!


充の態とらしい咳で我に返った円城寺達は席に着き、
俺と充も席に着いた。







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